せんせのブログ

分液ろうとによる「抽出」の実験

2009.07.17

今日は、1年、生命バイオ分析学科と医療からだ高度分析学科の基礎化学実験の様子をお伝えしたいと思います。では、早速、お邪魔しまーす。

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おっ、今日もみんな張り切って実験をしているようです。どれどれ、今日はどんな実験器具を使って、どのような実験をしているのかな?もうちょっと、近づいて見てみましょう。

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何やら変わった形のガラス器具に黄色い溶液と無色透明な溶液の2種類が入っています。そして、それを撹拌(振り混ぜること)しては、ガラス器具についているコックを開けてガスを抜き、また同様に撹拌してガスを抜くという操作を繰り返しています。
さて、これはいったい何をしているのでしょうか?

まず、このガラス器具の名前ですが、「分液ろうと」といいます。ちょっと変わった形をしているので、初めて見る方は珍しい形をしていると思われるかもしれません。
では、この分液ろうとを使って、どのようなことをしているのでしょうか?

先ほどの写真では、黄色い溶液を確認することができました。この黄色い溶液はジエチルエーテルという有機溶媒になります。有機溶媒、なかなか聞きなれないと思いますが、油と思ってもらって結構です。このジエチルエーテルの中に、4種類の物質が溶け込んでいます。今日は、その4種類の物質を、それぞれの化学的性質を利用して、取り出す方法について実験を通して勉強しているのです。

この4種類の物質ですが、ジエチルエーテル(油)には溶けることができるのですが、普通の水には溶けません。しかし、塩酸、炭酸水素ナトリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液には、溶けることができます。それぞれの溶液に溶けることができる性質を利用して、1つずつ、ジエチルエーテルの中に溶け込んでいる物質を分離していく実験をしています。

このように、あるものを、別のあるものに溶かして取り出すことを、化学の言葉で「抽出」といいます。身近なところでお話をすると、コーヒーを入れるときに、コーヒー豆にお湯を注ぎますよね?これは、コーヒー豆の中に含まれている成分をお湯で「抽出」している、と説明することができます。同様に、お茶も、お茶の葉にお湯を注ぐことで、お茶の成分をお湯に「抽出」している、と説明することができます。

今日の実験では、抽出の原理と、実際に抽出がどのようにして行われるのかを、学んでいます。

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しかし、その4物質が本当に抽出できているかは、ただ見ただけでは分かりません。そこで、それぞれの物質が含まれているという証拠を得るために、検出確認反応を行います。この検出確認反応では、抽出がうまく行われていれば、ある試薬を加えたときに、沈殿が発生したり、色が変わったりなどの現象が起こります。その化学反応を確認することによって、初めて「抽出がうまくいった」と判断されるわけです。

このように、実験の操作を行った後には、その操作が正しいかどうか、ということ必ず考える必要があります。これは、化学を学ぶ上で必要な知識と技術になります。ただ、操作方法を会得するわけではなく、操作によって得られた結果(成果)を確認し、その良し悪しを判断することが、分析化学者には求められます。この姿勢をしっかりと身に付けてもらえるように、先生たちは、日々の授業や実験の中で説明や解説を行っています。1日でも早く、この大切な技術を会得できるように、一緒に頑張りましょう!!

by ボヤッキー